研究概要 |
本研究は、少子高齢化のもとでの財政政策と物価への影響について明らかにすることを目的とする。今年度は、その理論的基礎となるモデルを構築し、論文をワーキングペーパーとして刊行した(Hideki Konishi and Kozo Ueda, "Aging and Deflation from a Fiscal Perspective," Bank of Japan Discussion Paper Series 2013-E-13, 2013.) 。また、北海道大学で研究発表を行った。 モデルでは、「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of Price Level、以下FTPL)」を、人口動態と財政政策に着目しながら、2つの点で拡張した。第1に、世代重複モデルに変更した。若年・老年世代を明示的に分離し、人口動態が財政政策や物価に与える影響を考察するために、FTPLを世代重複モデルに応用した。第2に、財政政策を内生化した。既存のFTPLでは財政政策は外生とされているところであるが、本モデルでは、政治経済学的手法を用いて、政府は、若年と老年世代の効用の和を最大化するように、税金と国債発行額を内生的に決定するものとした。この際、政府は、自身の政策が物価に与える影響も考慮に入れる。 モデルを通して、少子高齢化が財政政策を通じてデフレを生むことを示した。ただし、その結論は、少子高齢化の原因によって異なる。すなわち、寿命の伸びはデフレにつながる一方、出生率の低下はインフレにつながることが示された。
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