研究課題/領域番号 |
25889067
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
複合材料・表界面工学
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
PRATT Andrew 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90705245)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2014年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2014年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2013年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 磁性 / スピンエレクトロニクス / 半導体物性 / 表面・界面物性 / 有機導体 |
研究概要 |
本研究は、様々な基板に対する有機半導体の蒸着挙動の解明をスピン偏極脱励起分光法と呼ばれる表面分析技術によって調べることに焦点を当てて実施した。特に銅フタロシアニン分子の吸着構造が被覆率や温度にどのように依存するかを調べた。スピン偏極脱励起分光法は非常に表面敏感であり、表面上の分子の方位の微妙な変化も検出することができ、MgOあるいはFe3O4の表面では銅フタロシアニン分子が約250Kより低温で傾斜する構造をとることを明らかにした。この研究は、梨花女子大学Kim Tae Hee教授のグループとの共同研究として行い、本研究の結果から、同大学グループが有機スピントロニクス素子に対して測定した、磁気抵抗効果の特徴的な温度依存性を合理的に説明することができた。 さらに、エピタキシャルに成長したFe3O4 (001)層とFe (001)層の間の界面で中間層を介した交換結合の研究を実施した。交換結合は、磁気記録媒体や磁気ランダムアクセスメモリなどの実用素子への応用において磁気配列を制御する根幹をなす特性である。もし、交換結合が十分大きければ、2つの強磁性層の反平行配列によって磁気ゆらぎを生ずるエネルギー不安定性が解消される。従って、Fe/Fe3O4 (001)多層構造を用いた反強磁性構造やフェリ磁性構造を作りこむ素子応用への道が開かれる。ただし、それには、反強磁性結合が界面に存在することを証明することが求められ、界面特性も詳細に解明しなければならない。そのため、Fe3O4 (001)層とFe (001)層の相対的なスピンの並びの計測にスピン偏極脱励起分光法を適用した。測定結果は、層間の磁気結合が反平行であることを示した。これは、この種の界面において中間層を介した交換結合が働いていることを示した初めての直接的証拠である。この交換結合は、密度汎関数法による第一原理計算によっても確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年間を通じて、研究計画に明記されたスピントロニクス素子開発に資する表面スピン特性あるいは界面スピン特性を有する材料の特性解明に関する研究を着実に遂行することができた。さらには、多層膜のスピン特性に関する研究の端緒を開くことができ今後の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としてNIMSで作成したフェライト薄膜や筑波大学から提供のフェライト薄膜に関してその表面磁気特性を調べることを重点的に進める。CoとFeの比率の正確な制御による高品位膜の作成とZnあるいはMnフェライトも計画通りに遂行する。さらに、Fe/Fe3O4 (001)構造での交換結合や強磁性体表面の銅フタロシアニンの追加データの取得など関連研究を完了する。また、新しく、2階建て構造をもつ有機半導体ののパラシクロファンを研究対象に含める。最近、有機スピントロニクス素子への応用でスピンフィルターの良い候補として注目されている。2重の芳香環のうち基板に接する側が強く基板原子と混成して偏極するが、もう一方の側が間接的にのみ偏極変調を受けることで有機半導体と強磁性体界面での理想的なスピン伝達が期待できる。
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