研究概要 |
研究代表者を中心としたサルエイズモデルを用いた解析から、「リポペプチド」という新しい抗原種に対する特異的T細胞応答の存在が明らかとなってきた。しかし、その分子細胞機序は不明である。そこで、平成25年度においては、リポペプチドを提示する抗原提示分子の同定を目指した。 アカゲザル単球を免疫原として樹立した数千に及ぶモノクローナル抗体群の中からリポペプチド抗原提示を特異的に阻害する抗体をスクリーニングした結果、抗MHCクラス1分子重鎖抗体および抗サルベータ2ミクログロブリン抗体が阻害抗体として同定された。このことから、古典的MHCクラス1分子(Mamu-A,B)あるいは非古典的MHCクラス1分子(Mamu-E,F,I,AG)がリポペプチド抗原提示の責任を担うものと考えられた。そこで、サルMHCを網羅的に単離することを目的に、全てのMHCクラス1遺伝子において高い相同性を示す領域に特異的に結合するDNAプローブを作製した。このプローブを用いて、サル単球由来cDNAをソーティングし、サルMHCクラス1遺伝子のcDNAライブラリーを構築した。このライブラリーの中からリポペプチド抗原存在下に特異的T細胞株を活性化する能力のある遺伝子をスクリーニングしたところ、新規アリルであるMamu-nov*1をリポペプチド抗原提示分子として同定することに成功した。 以上より、MHCクラス1分子がリポペプチド抗原提示を担うことを初めて明らかにした。
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