研究目的 : 本研究は、中国南朝で成立した伝奇文学である六朝志怪を教材として評価し直し、新しい教材としての可能性を提案することを目的とした。 研究方法 : 六朝志怪を翻案した日本の古典文学のリスト化を行い、その中でも教科書に採録されているものを東京学芸大学付属図書館や教科書図書館等で調べ、指導書の内容から漢文との連携が指導書上で行われているのかをまとめていった。また、この時点で新しい見地を発見した。国際バカロレア資格のディプロマ・プログラムにおいては「studies in language and literature」(言語と文学の研究)で母語に翻訳された世界文学を読了した上での課題作文が必修となっており、ここでは比較が重んじられる。課題作文を作成するための導入段階の教材として、和漢比較教材が活用できる可能性は十分にあるものと思われる。したがって本来は外国の文学でありながらも、日本文学に取り入れられている六朝志怪は、この国際バカロレア資格における比較文学という視点から、活用が可能であるとし、この可能性について追及していくことにした。 研究成果 : 国際バカロレア資格の「言語と文学の研究」の課題作文は一冊を読了して行うため、段階を踏んで短い文章から練習を行うべきである。その際、自国の文化との共通性を持つ漢文教材をその段階の一つとして使うのは理にかなっている。さらにその中で六朝志怪は一つのエピソードが短く、本質が記録であるため内容が簡易でストーリーをつかむことが簡単であるという利点を持つ。また、六朝志怪は本文に口語表現が含まれているため、漢文そのものを読むのは文法的に難しい面があるという欠点があったが、この課題研究は翻訳されたものを比較するため、この活用法ならば利点のみを最大限活用することができる。したがって、国際バカロレア資格の上での指導において、六朝志怪は非常に有用な教材であるという結論に達した。
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