全国からピックアップした8校(本補助金から旅費を支出したものは7校)の学校を訪問し、実務担当者から当該校の科目履修のさせ方等について、実際に生徒が使用する教材の提示を受けながら詳細に聞き取り調査を行った。その結果、科目選択制の「現実」として、訪問したほとんどの学校(8校中7校)で学校としての教育的価値観に基づく科目選択上の枠が規定されていた。ただし、その枠はこれまでよく指摘されるような「単に進学実績を高めるため」という単純なものではなく、地域社会からの要望、生徒の実態など学校ごとの事情を色濃く反映したものであることがわかった。ただその事情と総合学科教育の考え方に相反する事項も多く、各校とも苦しい判断をしていることも多い。生徒自身も学校が示す一定の価値の中で進路意識を形成するという過去の研究で指摘されている状況がかなり強いということも見えてきた。この点について勤務校でのアンケート調査では特筆すべき結果を得ることができた。それは科目選択においては学校から一定の枠を示して欲しいという生徒ができるだけ自由な科目選択を希望する生徒よりも多かったことである。「自由な科目選択は深い学習につながらない」、「自由に選択してよいといわれてもよくわからない」という意見が多くあげられた。そのような意識の生徒が自らの価値観を形成し、その価値観に従って判断する力を獲得するために必要となるのが、総合学科教育の特徴の1つであるガイダンス機能である。どのようにすれば生徒が自らの進路展望を生徒自身の価値観に基づき形成していくことができるか、そのためのガイダンス機能をどのように充実さていけばいいか、総合学科教育の根本に関わる課題とその解決に向けた一定の知見を得ることができた。
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