真核生物の核内でDNAは、ヒストンタンパク質に巻き付いてヌクレオソームを形成し、さらに折りたたまれてクロマチン構造を形づくっており、細胞分裂の際には凝集して染色体として観察される。ヒストンタンパク質は、遺伝子の転写に関わりがあることや、動物だけでなく植物とも共通部分が多く、進化を通して極めて良く保存されていることから、本研究では、ヒストンタンパク質を教材化することにより、生物の共通性と遺伝子発現のメカニズムを実感させ、分子生物学的に探究する方法を習得させることができることを目的として研究を行った。 研究方法は、牛レバーやブロッコリー、サケの精巣である白子の3つの試料から、超遠心分離機を使用せずにヒストンタンパク質を抽出し、生徒が安全かつ安定した方法によってSDSポリアクリルアミド電気泳動法で分離できるようにゲルや染色液の選定を行うなど、実験方法の最適化を図った。電気泳動の結果から、3つの試料において、H3とH4は、ほぼ同じ位置にバンドが見られることから、真核生物におけるヒストンの共通性を確認することができた。また、白子に含まれている精子の核タンパク質には、ピストンの他にプロタミンが多く含まれていることがわかった。 さらに、電気泳動法によって分離したタンパク質がヒストンタンパク質であることを確認するため、抗原抗体反応を用いて検出するウエスタンブロッティング法を行った。 本研究の成果を学会で発表するとともに、生徒が探究的に進められる実習テキストの作成を作成し、基本的な概念をより深くかつ包括的に理解させ、科学的な思考力・判断力・表現力を育成するための教育プログラムの開発を行い、教員研修講座で紹介するなど普及を図った。
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