X線CCDにおいて厚い空乏層を持つことは、高エネルギー側の検出感度を向上できるという点で重要である。現在、厚い空乏層を持つ裏面照射型CCDの開発が進められており、空乏層厚を精密に測定することが非常に重要となっている。そこで、私は、空乏層厚を調べる手法として、ベータ線を用いた斜入射法に注目した。本研究では、斜入射法に用いるベータ線源の種類により、ベータ線が進む長さの比較することを目的とした。 今回、用いたベ一タ線源は^<90>Srと^<207>Biの2つである。空乏層厚80μmのX線CCDに入射角が約19度になるようにベ一タ線源を設置し、得られたイメージからベータ線が進んだ長さを調べ、比較を行った。また、事前にGeant4というツールを用いてこの実験のシミュレーションでも比較を行うといった2種類の方法で検証を行った。実験やシミュレーションから得られたイメージはクーロン力による相互作用で曲がったイベントが多く含まれてしまうため、選別アルゴリズムで直進したイベントのみを取り出し、比較する対象に用いた。 シミュレーション結果から、ベータ線が進んだ長さの平均は、^<207>Biが6.93ピクセル、^<90>Srが4.95ピクセルとなり、^<207>Biの方で空乏層内を直進しやすいことが分かった。実験結果からは、^<207>Biが6.23ピクセル、^<90>Srが6.66ピクセルとなり、線源による違いが確認できなかった。そこで、アルゴリズムの条件を厳しくし、より直進したもののみを選別することにした。その結果、^<207>Biが、6.35ピクセル、^<90>Srが5.51ピクセルとなり、今回も明らかな違いは生じなかった。シミュレーションと実験で結果が異なった原因は、分からなかったが、空乏層内を進む動きをシミュレーションでより詳細に再現し、アルゴリズムに適用させることによって、検証できるものと考える。本研究では、1つの角度でしか検証を行っていいないので、角度による影響が生じるかは、今後検討する必要がある。
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