研究目的 本研究は、2003年5月26日に発生した宮城県沖の地震に対してアンケート震度調査を行った岩手県矢巾町および滝沢市(H26.1.1滝沢村が市政執行)において常時微動を観測し、基盤深度の変化を推定して地震による揺れと地盤との関係性について明らかにすることを目的とする。 研究方法 微動観測はアンケート震度データが多い地区にて行った。観測点間隔は約200mである。矢巾町では高田地区、国道4号から東北本線矢幅駅にかけての県道207号沿いの地区および矢幅駅西側の地区にて微動観測を実施した。観測点は102点である。滝沢市では滝沢ニュータウン周辺、土沢から室小路にかけての諸葛川沿いの地区および巣子地区にて微動観測を実施した。観測点は104点である。各観測点にて約15分間微動を測定した。 研究結果 観測された微動のH/Vスペクトル比を計算しピーク周波数から基盤深度を推定した。 矢巾町では基盤深度が高田地区は比較的浅く、国道4号から矢幅駅までは矢幅駅に向かって徐々に深くなり、矢幅駅西側は深いと推定された。2003年に実施したアンケート震度調査では、高田地区や国道4号付近は震度4が多く、国道4号から矢幅駅へ近付くに従って震度5弱が多くなり、矢幅駅西側は震度5強が多いとの結果を得ている。アンケート震度との比較より、矢巾町では基盤が深くなるに従って地震時の揺れが大きくなっているのではないかと推定される。 滝沢市では滝沢ニュータウンは観測範囲の西側の一部がやや基盤が深いと推定された。土沢から室小路にかけての地区は、調査範囲の北側の一部の基盤がやや深いと推定された。巣子地区は基盤震度が疎らであった。アンケート震度との比較は、相関性が低い結果となった。滝沢市は岩手山からの噴出物が堆積した地盤であるため、地下構造が複雑になっていると推定される。地震による揺れの違いは、より浅い地盤構造の違いが影響しているのではないかと考えられる。
|