研究概要 |
七島イを用いた畳表は, イグサの畳表よりも耐久性にすぐれていることが広く知られているが, 七島イについては未だ調査されていない部分が多く, 物理的特性も明らかにされていない. 現在, 国内生産量は輸入畳表におされて生産が激減している, 七島イの特性を明らかにすることで高い付加価値(高強度・高耐久性等)のあるカーボンニュートラルな生物由来原料としての可能性を秘めている. 本研究では, 国内で大分県国東でのみ生産されている農作物である七島イの優位特性を解明するために主にその耐久性に関する調査を中心に以下の試験を行った. その概要を報告する. 1. 七島イの構造および物理的性質の調査 走査電子顕微鏡を用いて, シチトウイとイグサ(国産・中国産)との比較を行った. シチトウイとイグサは構造が大きく異なっていた. 茎の断面観察では七島イの外皮厚が約100μm(イグサの約2倍), 維管束は外皮に隣接しているものの他に柔組織内にも存在し, 柔組織中維管束の直径は約200μm(イグサの維管束は外皮に隣接して存在, 約2~4倍)であった. スポンジ状組織の構造は, 丸い細胞に囲まれた空隙により形成されている(イグサは細胞の形状が星形, 隣の細胞と腕を広げ手をつなぐことで空隙を形成). 2. 七島イ由来成分の取り出しと原料としての検討 シチトウイとイグサ(国産・中国産)を部位(外皮, 維管束, 柔組織)ごとに分別し重量を測定した. シチトウは維管束5%(イグサは2%)および柔組織16%(イグサは9%)の割合がイグサより大きかった, 外皮は64%(イグサは約80%)であった. 部位ごとのX線回折測定ではセルロースの結晶性は外皮42%と一番多かった. 外皮厚が厚いことと, 維管束が柔組織中に存在し太いことが耐久性に関与していることが考えられる. また, 外皮と維管束を原料として利用する場合, その大部分を原料として利用することが可能であることが分かった.
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