橿原市昆虫館では、季節に関係なく亜熱帯のシロオビアゲハを毎月50匹の成虫を羽化させ、温室に放し飼いしている。冬季では、野外での食草となる柑橘類の葉が餌に適さなくなるので、冬季の餌不足を補うために幼虫に人工試料を与えている。人工試料飼育下においては、個体の大きさは野外個体とほとんど変わらないが、生育途中で摂食を行わない個体は死亡し、最終的には成虫までの生存率は約16パーセントに留まる。人工試料を摂食しない原因は何なのか、水分含量や成分などの摂食させる要因を解明することが今回の研究課題である。 人工飼料は、飼料原体(予め組成分を混ぜ合わせた飼料)とミカン粉末(ミカン葉を乾燥させ粉砕し粉末状にしたもの)、寒天、水(49cc)を混合し冷蔵庫で冷やし固め2種類作成した。一つは、飼料とミカン葉粉末を寒天で固めたものを2~3mmの厚さで短冊にスライスし与える。もう一つは同じように作成し、同じ厚さでスライスその後、真空乾燥(フリーズドライ)する。使用時には、水に浸け水分を吸収させて与える。飼育容器はシャーレを使用し、紙をシャーレの底に敷き、その上に樹脂製の網をのせてその網の上にスライスした飼料をのせてみた。シロオビアゲハの幼虫を各50匹ずつに試した。飼育環境は室内で、温度は25度、日照時間はL16時間、D8時間である。 結果、フリーズドライでの羽化までの生存率は約36%で、冷やして固めた飼料では18%であった。水分含有量が多いと、摂食量が多く羽化率が改善したように思われる。今後は、水分含有量がどの程度必要であるのか、実験個体を増やしつつ、水分含量と摂食量の関係について精緻に検証する。また、他のアゲハチョウにも同じ要領で試してみたい。
|