1. 研究目的および方法 : トマト果実の生理障害果(尻腐れ果)の発生はカルシウム(Ca)の供給不足とされる。そこで平成24年度奨励研究では本栽培法のCa供給源として産業廃棄物 : 無除塩カキ殻の利用を考え、コンテナ培地内の毛細管現象による水分供給部分に筒状の親水性不織布に各種カキ殻資材を充填後、網状暗渠パイプ作成容器に挿入して埋設する方法で試験を行った。その結果、すべての処理区で尻腐れ果が多発し、カキ殻資材による軽減効果はなかった。しかし、無除塩の粒状カキ殻利用では培地に塩分が顕著に溶出せず、埋設した資材内に根が侵入し、本栽培法できる可能性が示された。 本年度は、粒状無除塩カキ殻(粒径2~15㎜)を供試し、春作の小規模試験中玉トマト栽培では昨年度の資材埋設法を検証した。一方、低温乾燥したカキ殻にはアミノ酸やミネラル(塩分)を含有するため、秋作では小規模試験中玉トマトと生産現場ミニトマト栽培において果実品質(糖度、酸度、果汁塩分値、グルタミン酸)を調査した。 2. 結果および考察 : 1)粒状無除塩カキ殻を充填した容器を培地に直接埋設する処理と親水性不織布で包んで埋設する処理を行い、培地に容器を直接埋設しても培地にはカキ殻の塩分が顕著に溶出をせず、容器内へ根が侵入・伸長した。 2)昨年度はすべて処理区で尻腐れ果が発化したが、本年度は春作、秋作ともにすべての各処理区において尻腐れ果はほとんど化生しなかった。 3)秋作の小規模試験、生産現場試験では埋設容器に粒状カキ殻と汚砂を充填した2処置区で果実品質調査を行ったが、両処理区間に差はなかった。しかし、容器内へ侵入・伸長した根の乾物重(g)は各処理区にも差がなく、カキ殻への根の接触によって何らかの成分を吸収していると推察した。 以上のことから、本年度の研究ではCa供給源 : 無除塩カキ殻による尻腐れ果発生と果実品質におよぼす効果を示すことができなかった。
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