【背景と目的】1987年の米国のBitettoらの報告より、一般的に猫の四肢骨肉腫は患肢断脚術のみで予後良好とされているが、実際の臨床の現場では外科治療後に肺転移が認められる症例も少なくない。そこで本研究では、国内の猫の四肢骨肉腫の患肢断脚後の予後について調査することを目的とした。 【方法】研究デザインはヒストリカルコホート研究、1997年1月~2012年12月の過去15年間で、アイデックス ラボラトリーズ、ノースラボおよびマルピー・ライフテックの国内3ヵ所の病理診断施設にて猫の四肢に発生した骨肉腫と診断され、患肢断脚術が実施された症例を調査対象とした。生存期間は外科手術日~死亡日と定義し、Kaplan-Meier法にて累積生存曲線を求めた。遠隔転移の有無および生存期間と関連する因子の解析では、年齢および腫瘍発生部位を調査因子とした。多変量解析にはロジスティックモデル、Cox比例ハザードモデルを使用した。p<0.05を有意差ありと判定した。 【結果】調査対象となった34例の年齢の中央値は11歳齢(2~18歳齢)、性別は雄が19例(うち去勢雄16例)、雌は15例(うち不妊雌11例)、体重の中央値は4.3kg (2.7~10.9kg)であった。病変部位は大腿骨13例、脛骨6例、橈骨3例、上腕骨4例、肩甲骨3例、手根骨3例、中足骨もしくは後肢趾骨2例であった。追跡期間の中央値は316日(9~1678日)で、追跡期間中の局所再発率は10.7%(3/28)、リンパ節転移率は4.5%(1/22)、遠隔転移率は48.0%(12/25)であった。遠隔転移が認められた12例の転移部位は肺9例、肺および皮膚1例、骨2例であった。全症例の中央生存期間は489日(9~1678日)であった。いずれの因子も遠隔転移の有無との関連は認められなかった。多変量解析にて年齢が生存期間と関連し、若齢であることが負の予後因子となった(p=0.012、ハザード比=0.76、95%CI : 0.61-0.94)。 【考察】国内の猫の四肢骨肉腫は患肢断脚後に補助化学療法が適応となる可能性と定期的な画像検査の必要性が示唆された。
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