[研究目的] ヒト血管内皮増殖因子に対するモノクローナル抗体であるベバシズマブは、肺がんや大腸がんに対する代表的な分子標的薬である。しかしながら、約20%の患者では高血圧が発症するため、定期的な血圧測定と適切な降圧薬の投与が必要とされる。ベバシズマブと一部の降圧薬の間では、一酸化窒素が関与しているため、両薬剤の併用によって抗腫瘍効果に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、がん患者におけるベバシズマブの抗腫瘍効果に及ぼす降圧薬の影響についてレトロスペクティブに調査する事を目的とした。 [研究方法] ベバシズマブが単剤または併用で投与された肺がん、大腸がん患者10名を対象とした。電子カルテシステムから患者背景、血圧測定値、降圧薬の服用状況に関する情報を収集した。 [研究成果] ベバシズマブ投与後、翌日までの血圧変動について調査した結果、10例中2例の患者においてGrade 1または2の血圧上昇が認められた。また、別の1名の患者については、ベバシズマブ投与直前の血圧が高いにも関わらず、ベバシズマブが投与されていた。 降圧薬の服用状況ついて調査した結果、2例の患者では投与開始前から降圧薬を服用していたが、ベバシズマブ投与後も降圧薬の服用は継続し、投与量の変更や新たな薬剤の追加は認められなかった。ベバシズマブ投与後、高血圧の発症を認め、降圧薬が新たに追加投与された患者は1例であった。降圧薬投与後は、適切に血圧がコントロールされていた。今後更に症例数を増やし、ベバシズマブの抗腫瘍効果に及ぼす降圧薬の影響に検討していく予定である。
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