新規制吐薬アプレピタントの注射剤は、他薬剤との配合変化に注意を要し、針刺しによる侵襲や投与時の血管痛などの有害作用により、繰り返し行われる化学療法において患者のQOLを低下させる一因となる。一方、そのカプセル剤は、侵襲を伴わない簡便な方法であるものの、脱カプセル化した際の有効性、安全性及び生物学的同等性に関する評価が十分に行われていない。そのため脱カプセル化による経鼻胃管を介した投与経路を必要とする嚥下障害を有する患者では、アプレピタントにおいて注射剤以外の方法を選択することが難しい。そこで、本研究では、アプレピタントカプセル剤の脱カプセル化がアプレピタントの薬物動態に与える影響と有効性や安全性に与える影響を明らかにすることを目的とした。 1. 「臨床研究データベース」から、シスプラチンによる化学療法中にアプレピタントカプセル剤を使用した患者を抽出し、アプレピタントの制吐作用について後方視的にカルテ調査を行った。その結果、7ケ月の調査期間の中で対象となった56例のうち15例で悪心が発現しており、その内、嘔吐は1例で発現していた。なお、別の1例において脱カプセル化したアプレピタントが投与されていたが、悪心嘔吐共に発現していなかった。 2. 脱カプセル化したアプレピタントの制吐作用や有害作用を評価する目的で、脱カプセル化有群と無群におけるアプレピタントの使用日、使用後3日目及び使用後7日目の悪心の有無、嘔吐回数、追加制吐薬の使用有無、排便回数、吃逆の有無及び食事摂取量を調査するための日誌を作成した。 3. 脱カプセル化の有群と無群において、アプレピタント薬物血中濃度を測定し薬物動態を解析すること及び調査用の日誌を元にアプレピタントの制吐作用、有害作用を解析することについては、医の倫理委員会に申請を行い、研究の承認を得て現在症例集積中である。
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