2012年に日本化学療法学会/日本TDM学会が作成した抗菌薬TDMガイドラインの中で、バンコマイシン(VCM)とテイコプラニン(TEIC)については持続血液濾過透析(CHDF)時の投与量について記載されているが、エビデンスレベルはC1-IIIであり、ガイドラインに記載された投与量をそのまま患者に投与してよいのか疑問が残る。 そこで、2009年1月1日~2013年12月31日の間に信州大学医学部附属病院高度救命救急センターにおいて、CHDF施行中にVCMが投与開始となった6症例を対象とし、ガイドラインに記載されているCHDF施行時のVCMの投与量と実際の投与量を比較した。6症例のうち、VCM投与中に最初に測定した血中濃度が目標血中濃度(15~20μg/mL)であった症例は3症例(症例1~症例3)であった。3症例(症例1~症例3)の中で、VCMのローディングドーズがガイドラインに記載されている投与量(ローディングドーズ : 初回15~20mg/kg、維持量 : 7.5mg/kg~10mg/kg)の範囲内であった症例はなかった。 【症例1】ローディングドーズ : 22.2mg/kg24時間毎を2日間、維持投与量 : 11.1mg/kg24時間毎、初回血中濃度 : 投与72時間後17.2μg/mL 【症例2】ローディングドーズ : 18.3mg/kg24時間毎を2日間、維持投与量 : 9.1mg/kg、初回血中濃度 : 投与24時間後16.16μg/mL(症例1~症例3) 【症例3】ローディングドーズ : 16.5mg/kg24時間毎を4日間、維持投与量 : 12.4mg/kg24時間毎を8日間その後8.2mg/kgを5日間、初回血中濃度 : 投与72時間後17.3μg/mL いずれも、ガイドラインに記載されている初回投与のみのローディングではなく、ローディングドーズとして、複数回の投与が必要であった。 CHDF施行中でVCMを投与する患者は重症感染症であることが多く、早期に有効血中濃度に到達させる必要がある。しかし、ガイドラインに沿った投与量では早期に有効血中濃度に到達させることが困難であることが確認できた。今後は、CHDF条件も考慮した投与量モノグラムを作成する必要があると考えている。
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