研究概要 |
【研究目的】 抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)には、代表的な副作用として腎機能障害がある。そのため、腎機能障害が発現した際は早期に適切な処置を実施し腎機能障害の悪化を防ぐことが重要となる。しかし、通常、腎機能の指標として汎用されている血清クレアチニン(sCr)は、腎機能障害が発症してもすぐには上昇せず、sCrが上昇した時には腎機能が既に進行している場合が見受けられる。そこで、血清シスタチンC(sCys-C)がCDDPによる腎機能障害のマーカーとして有用であるかを検討することを本研究の目的とした。 【研究方法】 研究期間内おいて、シスプラチンによる腎機能障害が発現した際にsCys-Cが測定された症例は無かった。そのためCDDPおよび類薬であるカルボプラチン(CBDCA)が投与された患者20名を対象としてsCys-CとsCrとの相関およびそれぞれから算出される推定腎機能値(eGFR)と24時間蓄尿による腎機能値(24hCcr)との相関を調査した。 【研究成果】 sCys-CとsCrは相関関係が認められた(r=0.890, P<0.001)。eGFR_sCys-CとeGFR_sCrは相関関係が認められた(r=0.747, P<0.001)。24hCcrとeGFR_sCys-CおよびeGFR_sCrではそれぞれ(r=0.707, P<0.007)、(r=0.613, P<0.026)と相関関係が認められた。 24時間蓄尿による腎機能評価が望ましいが、業務が繁雑となる。そのためsCrによる腎機能評価が汎用されている。今回の調査により、sCys-CはCDDPまたはCBDCA投与患者においてもsCrと同等の腎機能評価が可能であることが明らかとなった。しかしながら、腎機能障害の早期発見のためには、引き続き腎機能マーカーとしての鋭敏さの評価が必要であると考える。
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