研究概要 |
動物実験に用いるマウスの微生物学的汚染検査項目のうち、マウス肝炎ウイルスMHVについて、現行では、免疫酵素法や、蛍光抗体染色法を行っていて、陽性となった場合はさらに肝臓などの臓器を材料に逆転写遺伝子増幅法RT-PCRを用いた精密検査を行っているが、どの段階においても採血・採材や検査実施に時間と労力がかかる。そこで、マウス糞便中のMHVウイルス遺伝子(RNA)を逆転写等温遺伝子増幅法RT-LAMPによって目視試薬とともに増幅検出することが出来ないか検討した。陽性検体としてMHV感染細胞を用いる代わりに、MHV-JHMIA株のnucleocapsidタンパクのコード領域(MHV_nuc)を保持するプラスミド(DNA)をMHV陽性サンプルとし、DNAを増幅するLAMP法で実験を実施した。LAMPに用いるプライマーセットは同法開発メーカーのホームページ上の計算ソフトを利用して4組のプライマーセット(1組4種類)05,25,26、68を設計・合成した。健康なMHV非感染マウス糞便1個にMHV-DNA (70ug/uL) 10uLを滴下してしみこませた後、蒸留水200uL中で5分間煮沸した遠心上清をLAMP用陽性ウイルスRNAに代わる鋳型とした。 LAMP反応はLAMP法キット(Loopamp DNA Amplification Kit 栄研化学)の説明書にしたがって、反応液、鋳型、プライマーセット、増幅用酵素、目視試薬を規定量混ぜ合わせて全量25uLの反応系を調整して63℃60分間恒温装置にて反応させたところ、プライマーセット5,25,68の三組において反応が進み目視で遺伝子増幅が確認できた。それぞれのプライマーセットはMHV_nuc遺伝子上において、セット5が5末端側を、25と26が中間付近、68が3末端側の配列となっているので、5末端側のセット5と3末端側のセット68を併用したLAMPで、両者が陽性となればMHV遺伝子増幅陽性の特異性が明確となり、本法を用いることで動物実験施設内での微生物学的汚染検査が正確かつ簡便に行えることがわかった。
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