研究概要 |
免疫電顕目的ではなく作製されたエポン試料でも賦活化により免疫染色が可能になれば病理診断や研究に有意である。試料は病理検査室に提出された病理検体の切除胃を用いた。病変部から離れた正常部分を極少量採取し、(1) 4%パラホルムアルデヒド固定→水溶性樹脂包埋。(2) 2.5%グルタルアルデヒド固定、2%オスミウム酸固定→エポン包埋。それぞれ超薄切片を作製しホルムバール膜張りニッケルメッシュに載せた。(1)は通常の免疫染色を行い、(2)は賦活化の検討に用いた。一次抗体はMUC5AC抗体、二次抗体はProtein A-gold (15nm)を使用した。 (1)水溶性樹脂包埋試料による免疫電顕 一次、二次抗体の濃度を検討し、一次抗体は5倍、二次抗体は10倍希釈で確実に染色された。結果は胃粘膜上皮細胞の細胞質に金粒子が標識され、核、粘液、他の細胞には確認されなかった。 (2)エポン樹脂包埋試料による抗原賦活化の検討 無水シトラコン酸処理について検討した。電気ポットを使用し、98℃30分,1,4,8時間処理した後(1)の条件で免疫染色をした。1時間まではあまり差はなく、切片に小さな穴があいたが他にダメージはなかった。金粒子は確認できなかった。4時間では小さな穴のような空砲が多くなり、金粒子は観察されたが組織全体にあり非特異反応と思われた。8時間では切片のダメージは大きくなったが、染色結果に差はなかった。賦活化後に10%過酸化水素水でエッチングを行っても金粒子に有意な差はなかった。賦活化前にエッチングすると、エポン切片がぼろぼろになり観察は不可能だった。エッチングの時間を短縮し、賦活化も15分と短くすると観察は可能で、金粒子も確認されたがやはり非特異があった。今後、非特異反応を抑えるための工夫が必要と思われた。
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