研究概要 |
【研究目的】 我々は、統合失調症の病態解明のため、統合失調症患者において有意な関連が指摘されている染色体16p13.11領域のcopy number variant (CNV)に着目し、同領域内に位置する脳形成関連遺伝子のNDE1を統合失調症候補遺伝子と考え、統合失調症病態に強く関与する変異を探索するために、リシークエンス研究を行った。 【研究方法】 変異探索のために、433名の統合失調症患者のNDE1 coding exonをサンガー法にてリシークエンスした。その後、新規の変異に関して、独立サンプル(統合失調症1388名、健常対象群1694名)を用いた関連解析を行った。さらに変異による統合失調症病態への関与を検討するために種々のin silico解析を行った。 【研究成果】 リシークエンスにより、3種類の新規missense mutation (Q186E, S214F, R234C)を発見した。関連解析では有意差は認めなかったが、S214FはPolyphen-2とPMutにてタンパク質機能変化が予測された。さらにS214FはT215に立体障害を及ぼし、胎児期脳発達における神経細胞遊走との関連が示唆されるYWHAEとの相互作用低下が予想された。今後は発見された変異に関して、さらなる大規模サンプルを用いた関連解析や、より詳細な生物学的意義の検証が求められる。 本研究をさらに発展させることで、1. 早期診断を目的とした遺伝子検査法の開発、2. CNV内に存在する遺伝子中の変異に病態が推定できればモデル動物の作成も容易になり、病因・病態研究や創薬研究の推進に役立つこと、が期待される。
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