本研究は、マートゥリーディー派神学者の著述を分析し、同派における信仰非増減説の展開がどのような論理によって成立したのかを解明するものである。同派は「信仰は増減しない」という特徴的教義を持つ。 近年の研究では、政治的背景からアシュアリー派とマートゥリーディー派が接近したオスマン朝後期にこの教義に修正が加えられたことも指摘されている。しかし、「修正」後の教義が、マートゥリーディー派の神学者によるどのような概念的操作を経たものなのかは詳しく検討されていない。 本研究では、同派の信仰非増減説の展開を思想史的に分析するために、「修正」が行われた時期のテクストに対して十分な分析を加える。
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