研究課題
基盤研究(C)
本研究では、多声音楽における演奏表現の指示記号の中でも最古のものの一つと考えられる、コローナ記号に着目する。この記号は14世紀末に楽譜上に現れ、音楽理論の分野では以前から議論の対象となってきたが、その解釈については依然として定説が確立されていない。一方で、14世紀末から15世紀にかけて作成された多くの写本にこの記号が頻繁に用いられていることから、それ以前とは異なる意図のもとで新たに使用され始めたと考えられる。したがって、該当時期の写本におけるコローナ記号の用法やその背景を明らかにすることは、同時に、この時代における「記号」の意味や位置づけを解明する手がかりとなると考えられる。