本研究は、プロレタリア文化運動が戦時下において有効な対抗運動を実践することができなかった原因を探求するために、運動の嚆矢と位置づけられている雑誌『種蒔く人』の活動を、下記の観点から批判的に再検討する。 A) 国際反戦平和運動であるクラルテ運動に内在していた民族主義的傾向が、『種蒔く人』によって、日本のプロレタリア文化運動理論に組み込まれた様相 B)『種蒔く人』が宣揚したインターナショナリズムが、ナショナリズムを超克できなかった理論的隘路 C)『種蒔く人』のクラルテ運動とインターナショナリズムの論理が、後に戦時下の思想的根拠となった民族主義理論に転化していった過程
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