イギリスとその文学は、マラルメにとって、生涯にわたって重要な地であり、存在であった。にもかかわらず、先行研究は不思議と多くはなく、大胆な問い直しの気配もない。しかし、我らが詩人はつねに英仏の芸術や文学の状況を批判的な視野に収めつつ、相互の交流に大いに気を配っていたことは確かである。講演『音楽と文芸』で提起した「<文学>が存在し続けるという信」、これはいかなるものなのか? マラルメの思想を十全に理解するためには、フランスの文学場を論じるだけではもはや足りない。本来なら欧米という規模で考えるべき課題だが、少なくとも、海峡を挟んで向かい合うイギリスとの文学的・社会的な関係を今や問い質す必要がある。
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