南北朝時代(5~6世紀)の古墓からは、しばしば漢代の品と見紛う作行きの復古的な文物が出土する。しかし、それらが真に漢時代の作であるのか、漢の文物や典籍をもとに作られた倣古作であるのか、そして人々が何ゆえにそうした文物を副葬したのかは未解明のままである。この漢代あるいは漢代風の文物を保持しそれを副葬するという行為は、被葬者や一族が帰属する政権の自己認識、いわば「政権のアイデンティティ」と深く関わると予想される。本研究では、南北朝時代の陵墓から出土した漢代風の文物に対する実態調査を実施し、そうした文物の副葬背景を考察し、政権の存立とも深く関わるアイデンティティの問題を物質文化から明らかにしていく。
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