15世紀後半、朝鮮で編纂された『経国大典』は、中央集権体制確立の象徴とされ、多くの研究で注目されてきたが、これらの研究は、法典の制定趣旨や運用実態への考察が不十分だった。申請者は、これまでの研究で、朝鮮が中国法の影響を受けつつも独自に法を制定・運用していた点に着目してきた。本研究は、『経国大典』刑典内の刑罰法と裁判手続法が制定された経緯と趣旨について、当代の編年史料を用いて読み解くことで、朝鮮は法の制定と運用のいずれにおいても、中国とは異なる独自性をもっていたのではないか、ということを明らかにする。この研究により、朝鮮の法は中国法の引き写しであろう、という既存の先入観を打破できるものと考える。
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