研究課題
基盤研究(C)
我が国の従来の人格権論は,人格権の原則的性質を,その侵害の場合に認められるのは精神的損害賠償のみである,譲渡・放棄・相続の対象にならない,法人には認められないと限定する。一方で,その援用場面を名誉やプライバシー,氏名・肖像から精神的自由,さらに(立場によっては)環境・景観についてまで認める結果,性質についての例外を様々な点で認めざるを得なくなって,人格権概念の空疎化を招いてしまっている。その一因は「人格権は人格的精神的利益(のみ)を保護するのが原則だ」という前提にあるのではないか。この問題意識に従い,フランス法の文献調査・インタビュー調査等を行い,人格権の意義・性質・守備範囲の再検討を試みる。