「研究の目的」でも述べるように、医療事故の発生は不可避だが、事故の実態解明は徹底されなかった。情報面で優位に立つ医療側は、専門知識のない部外者に不信・警戒感があり協力を拒んだからである。また訴訟を通じた司法的解決は、原告の挙証能力に限界がある医事紛争でほとんど機能しなかった。 そこで、医療事故紛争の構造を明らかにするため、医事紛争の法的理解と安全工学的事故検証フレームワークを整理する。 また政策過程アプローチによって、医療事故調査制度が生成され、公的制度として発達する経緯を解明し、当事者間に「不人気」だが、国民的には求められていた制度がどのように形成されたかを明らかにする。
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