イノベーションは現代社会を成立させる言説装置(統治のテクノロジー)の一つである。企業経営のみならず社会問題や国家の政策運営の処方箋としてもほぼ必ず言及される概念となっている。しかしイノベーションが広く言及されるようになるのは、企業経営の現場では1980年代以降のことであり、その歴史は意外に短い。また、イノベーションの定義としてはシュンペーターの新結合があるが、この定義にはトートロジーの可能性も伴う。本研究では、こうした問題意識から、イノベーション経営の代名詞とされる3M社の経営におけるイノベーションの統治テクノロジーとしての影響力をそのアニュアルレポートの分析を中心に批判的に問い直す。
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