研究課題
基盤研究(C)
本研究は、道徳教育における伝記教材について、道徳的模範となる古典的権威=偉人の提示という従来型の活用法から、憧れの対象を自ら発見し、未来の自己像を予見する契機として自己形成へとつなげる読み方への転換を提起する。憧れの人物を模倣することが道徳的行為を促すと強調する「範例主義道徳理論」が海外で注目を集める一方、偉人伝に描かれた偉業は読み手とかけ離れすぎていて模倣につながりづらいとの指摘もなされる。そこで本研究は、19世紀米国の哲学者エマソンの述べる、到達可能だが未到達な自己像(代表的人間)との出会いが伝記の効用であるとの教育思想の吟味を通して、伝記の読み方の転換への示唆を探る。