研究課題
若手研究
中世の和歌作者たちは地名表現を用いる際、現地を訪れることなく観念的に詠むのが常だった。だが琵琶湖一帯は、中世日本の交通・経済・信仰・軍事の重要拠点として、生活の中で実見する機会が珍しくない場であり、なおかつ古くより和歌に詠まれ、非日常的で観念的なイメージが蓄積されていた場でもあった。こうした場の特性を踏まえて、本研究は琵琶湖の地名を詠む和歌を、比叡山・園城寺などの近隣の宗教勢力や北陸道・東山道等の水陸交通網の状況、石山寺参詣の盛衰などと照らし合わせながら分析する。そしてそれを通じて、和歌的表現の文学的達成のみならずその文化的、社会的意義をも明かす、新たな表現研究の方法を模索することを目指す。