本研究は、清朝中国を中心とする近世東アジア国際関係において、国家間の交流や交渉を現場レベルで仲介した「通事」の制度と実態を、比較史的視点から解明することを目的とする。琉球・朝鮮・西洋諸国と清朝との間で活動した清朝側通事、ならびに徳川時代長崎における唐通事を主たる対象とし、制度的背景、職掌、人的ネットワーク、経済的基盤などに注目して分析を行う。従来の外交史が「国家」を中心に構築されてきたのに対し、本研究は「仲介者」という現場の人員に着目することで、ミクロな視点から近世東アジアの地域秩序の再構築を試みる。国家間関係の実態を現場から捉え直す新たな知見を提示することが期待される。
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