身体変形感覚は,「まさに自分の身体である」という感覚(身体所有感)によって生起する.自己身体に対する認知機能は極めて柔軟であることが多数の身体所有感に関する研究から明らかになっている.身体の錯覚研究では「自己」と「モノ」または「自己」と「他人」に対する同期的な接触が,身体所有感変調の重要な要素であることを示してきた.一方で,「自己」と「自己」すなわち,自己の左右の身体に対する同期接触はほとんど扱われていない.自己の左右の身体に対する錯覚研究は,新しい身体運用を作り出すだけでなく半側身体不全を回復するミラーセラピー等の医療場面への貢献が期待されることから,基礎・応用研究として価値があるといえる.
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