本研究は、主権概念を軸に、19世紀のドイツ国家学がヨーロッパ及びアジアへと伝播した過程を分析し、明治日本におけるドイツ政治思想との取り組みを国際的な思潮のなかに位置づけるものである。 主権国家体制が世界規模に広がった19世紀に、国際的な影響力を有したドイツ国家学・国際法学のテキスト群がヨーロッパ・アメリカ・東アジアでいかに翻訳・解釈・援用されたのかを比較検討することで、西洋世界との対比から、東アジア国際秩序の文脈で近代日本の成り立ちを解明する。さらに、ドイツの学術を経由して理解された主権概念を結節点として、国内政治構造と国際関係の議論を接合させる形で明治日本の「主権」をめぐる思想史を描き出す。
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