研究課題
特別推進研究
動物は毎年繰り返し訪れる環境の季節変化に対し、より良く適応するために、光や温度などの外的変化を感知し、繁殖、渡り、ストレス応答などの生理機能や行動を制御している。このような動物の季節変化については、アリストテレスの著書「動物誌」にも詳述されていたが、その仕組みは謎に包まれていた。本研究では様々な動物の持つ洗練された能力に着目することで脊椎動物の季節適応機構の設計原理を解明することを目標とした。また季節適応を制御する革新的機能分子を創出することで、動物の生産性の向上やヒトの季節性疾患の克服を実現することを目指した。まず、メダカが生息地域の緯度に応じて異なる日長応答、温度応答を示すことを見出し、遺伝解析を実施した結果、日長、温度をそれぞれ規定する有力な候補遺伝子を同定することに成功した。現在、それらの候補遺伝子の機能を検討している。また、動物は繁殖期になるとストレス応答を増加させることが知られていたが、その分子基盤は謎だった。トランスクリプトーム解析を実施した結果、long non-coding RNAがストレス応答の季節変化を制御していることを明らかにした(Nat Ecol Evol, 2019)。高緯度地域では、冬季にうつ病を発症する冬季うつ病が深刻な社会問題になっている。冬季うつ病を含む様々な精神障害の患者においては概日時計に異常をきたしていることが知られているため、概日時計を調節する分子を既存薬から探索したところ、細胞レベルで体内時計の周期を調節するとともに、混餌投与によって体内時計の周期を調節する薬を発見することに成功した(EMBO Mol Med 2018)。またメダカをモデルとして冬季の社会性の低下を改善する既存薬をスクリーニングしたところ、社会性を改善する漢方薬成分を発見することに成功した。
A
A: 当初目標に向けて順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれる
すべて 2019 2018 2017 2016 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (18件) 雑誌論文 (36件) (うち国際共著 6件、 査読あり 25件、 オープンアクセス 13件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (59件) (うち国際学会 32件、 招待講演 59件) 図書 (11件) 備考 (10件)
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