研究課題/領域番号 |
26220207
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
基盤・社会脳科学
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳沢 正史 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (20202369)
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研究分担者 |
上田 壮志 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (00599821)
高橋 智 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50271896)
船戸 弘正 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授(WPI-IIIS) (90363118)
Liu Qinghua (LIU Qinghua) 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授(WPI-IIIS) (90723792)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2017年度)
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配分額 *注記 |
160,940千円 (直接経費: 123,800千円、間接経費: 37,140千円)
2017年度: 39,000千円 (直接経費: 30,000千円、間接経費: 9,000千円)
2016年度: 39,000千円 (直接経費: 30,000千円、間接経費: 9,000千円)
2015年度: 39,000千円 (直接経費: 30,000千円、間接経費: 9,000千円)
2014年度: 43,940千円 (直接経費: 33,800千円、間接経費: 10,140千円)
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キーワード | 睡眠・覚醒 / 脳神経 / 遺伝子改変マウス / ゲノムエディティング / 細胞内シグナル伝達 / 睡眠 / マウス遺伝学 / 神経生理学 / 生化学 / 睡眠覚醒 / 細胞内シグナル / フォワード・ジェネティックス / 神経科学 / 睡眠障害 |
研究実績の概要 |
1.リン酸化酵素SIK3の変異による睡眠量の増大と、明瞭な系統学的保存性。Sik3変異はエクソンをスキップするスプライス変異となる。スキップするエクソンがコードする52アミノ酸は脊椎動物間でよく保存されいる。この中には、ショウジョウバエや線虫でも保存されているPKAリン酸化部位が存在する。PKAリン酸化部位のセリンをアラニンに置換したSIK3を強制的に発現誘導させたところ、ショウジョウバエの睡眠様行動が延長した。 2. CRISPR法を用いたNalcn遺伝子改変マウスの作成と解析。同定したNalcn遺伝子変異のレム睡眠異常への因果性を証明するため、CRISPR法を用いて、Dreamless変異マウスに見出された1塩基変異をNalcn遺伝子に導入した。その結果、Dreamless変異マウスのレム睡眠短縮を再現することができた。 3. パッチクランプ法によるNalcn遺伝子変異神経の解析。Dreamless変異によるNALCN機能の変化を検討するために、野生型およびDreamless変異型のNALCNをHEK293細胞に発現させ、パッチクランプ法による電気生理学的な解析を行った。変異型NALCNは野生型に比べて顕著にイオン透過性が高まっていた。イオン選択性に乏しい点や膜電位非依存性である点については、野生型と同様であった。Dreamless変異マウス脳におけるレム睡眠制御神経の活動変化を明らかにすることが必須である。レム睡眠を抑制することが知られている中脳網様体のdeep mesencephalic nucleusをスライスパッチ法にて解析した。野生型に比べて、Dreamless変異マウスは記録中の平均膜電位が高く、発火頻度も高かった。レム睡眠エピソードの終止に関わる神経細胞群が過剰に活動するために、レム睡眠エピソードが短縮し、ひいては全レム睡眠時間が減少することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下の、当初研究に挙げたすべての項目について、現時点で順調に進展しており、いくつかの目標については予定以上のスピードで、または予想以上にインパクトのある結果が得られている。研究成果の一部は、昨年NATURE誌に掲載された論文にて公表した。 1 Sik3遺伝子変異マウスを用いた睡眠覚醒制御の細胞内シグナル伝達系の解明。FLAGタグを挿入した野生型および変異型SIK3ノックインマウスを作製しており、SIK3自身のリン酸化部位の定量的評価を行い、NATURE誌論文中にて公表した。これは当初の計画を超える研究の進展と言える。Sik3遺伝子変異マウス脳を用いたプロテオミクス、リン酸化プロテオミクス研究を実施し、現在投稿中である。 2 CRISPR法を用いたNalcn遺伝子改変マウスの作成と解析を目指して、Nalcn遺伝子にDreamless変異を導入したマウスを作製し、睡眠覚醒行動を評価した。このことにより、Nalcn遺伝子の変異によってレム睡眠短縮が生じることを証明しNATURE誌論文中にて公表した。 3 パッチクランプ法によるNalcn遺伝子変異マウス脳の解析。パッチクランプ法による、培養細胞を用いた野生型および変異型NALCNの解析を行った。また、レム睡眠を制御する中脳網様体内の神経核をターゲットに、野生型およびDreamless変異マウスのスライスパッチクランプ法による電気生理学的検討を行った。この結果は、NATURE誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
1.Sik3遺伝子改変マウスを用いた睡眠覚醒制御を司る神経回路の同定。Sik3 Ex13 floxマウスは、Cre依存的にExon13がスキップし、Sik3変異マウスと同様の覚醒時間の減少を示すかどうかを検討するために、全身的にCreを発現するAyu1-Creマウスと交配させた。得られたAyu1-Cre;Sik3 Ex13 floxマウスは、期待通りにEx13をスキップすることをゲノムDNA、mRNAおよび蛋白質レベルで確認した。このマウスの睡眠覚醒を検討したところ、Sik3変異マウスと同様の、顕著な覚醒時間の短縮を認めた。現在、Vglut1-Cre, Vglut2-Cre, Vgat-Cre, TH-Cre, CamKII-Cre, ChAT-Creとの交配を進め、睡眠覚醒のデータも得られている。インパクトのある研究成果とするため、脳領域特異的なCreドライバーとの交配を進める。研究期間内での発表を予定している。 2.Sik3遺伝子変異マウスを用いた睡眠覚醒制御の細胞内シグナル伝達系の解明 プロテオミクス、リン酸化プロテオミクス研究は、現在投稿中である。この研究を通じて、睡眠覚醒を制御する新しい候補蛋白質も得られているため、新たな研究計画を提案していく。 3.パッチクランプ法によるNalcn遺伝子変異マウス脳の解析 さらに研究を発展させるために、NALCNの開口に関わる機構の解明を目指している。サブスタンスPなどのGPCRを介したシグナルによる制御を中心に検討を進める。
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