研究課題
基盤研究(B)
iPS細胞の臨床応用において動物細胞非依存的な培養系の構築はとても重要である。具体的にはフィーダー細胞として使用しているMEFの代わりにiPS細胞由来の間葉系幹細胞を用いて培養することを検討した。platelet lysate(PL)は間葉系幹細胞培養においてFBS(fetal bovine serum)の代わりに用いられるため、健常人由来のiPS細胞を5%PLを含む培養液にて培養することで、6-8週間で充分に増殖した付着細胞を回収できた。この付着細胞を解析すると、表面抗原は骨髄やES細胞由来の間葉系幹細胞と同様であった。また、この付着細胞を間葉系細胞に分化させると、脂肪細胞、骨芽細胞や軟骨細胞に分化することが確認された。このため、この付着細胞はMSCであることが確認された。また、brachuryやMSX1の発現を認めたことから、中胚葉由来であることが確認された。次に、このiPS細胞由来のMSCとiPS細胞を共培養させると、iPS細胞は4週にわたり未分化性を維持することができた。このため、iPS細胞由来の間葉系幹細胞はMEFの代わりに使用できる可能性があると考えられた。その後、iPS細胞由来のMSCとiPS細胞との共培養において、無血清血液細胞誘導培地を用いて血液細胞への分化誘導を試みたところ、共培養10-14日目にcobblestone領域の出現を認めた。この細胞を回収すると、CD34陽性細胞が約10%認められ、血液細胞コロニーアッセイを施行すると様々な血液細胞コロニーが出現し、種々の血液細胞への分化誘導が確認された。この方法により、ヒトiPS細胞から動物細胞、動物血清非依存的に分化誘導された多能性造血幹細胞の産生が認められた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の基盤となるiPS細胞由来MSCの作製とそのiPS細胞由来MSCとiPS細胞の共培養により、動物細胞、動物血清非依存的に分化誘導された多能性造血幹細胞の産生が確認されている。今後、iPS細胞ドナー自身の血清やPLを用いてこの実験系により多能性造血幹細胞の産生を確認する。
iPS細胞をドナー自身のPLまたは血清存在下で間葉系幹細胞へ分化誘導し、分化誘導された間葉系幹細胞とドナー由来iPS細胞を共培養により多能性造血幹細胞を分化誘導する。分化誘導された多能性造血幹細胞をin vitroで培養し、産生された成熟血液細胞の機能解析を行う。また患者由来iPS細胞の樹立と患者由来iPS細胞からの多能性造血幹細胞への分化誘導を進めていく。
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