研究課題
基盤研究(C)
当該年度は、19世紀前半のドイツ語圏における演劇人口の拡大や、劇場改革運動の機運の高まり、さらに劇場のナショナル・アイデンティティを強化する市民社会的な道徳機関としての機能の強化を背景を踏まえながら、演劇界の重要人物達より提唱された演劇学校設立の構想について検証した。その際に、従来の研究では考慮されてこなかった、この構想と同時代のプロイセン政府を主導とする学校制度改革との並行関係について着目し、演劇学校の構想に反映する教養主義や人文主義の理念の反映を分析することで、俳優の公的人物=芸術家としての職業的地位の強化が推進されていたことを検証した。これに関連して、19世紀ドイツの作曲家リヒャルト・ヴァーグナーの著書を対象に、従来の研究では注目されてこなかった、俳優の国民教育的また啓蒙的な機能について検証した。ヴァーグナーは国民文化的な視点から、ドイツ演劇に内包する共同体性と芸術性を実現する俳優の機能を重視し、作家の芸術的意志を媒介する俳優の演技術や朗誦術に着目していただけではなく、俳優の倫理的また教育的な機能を高く評価していたことを、同時代の演劇史と芸術論の観点から検証した。また、ヴァーグナーの総合芸術の構想で示された高次の芸術理念を実現する新たな俳優像について、ヘーゲル美学やショーペンハウアー哲学の関連から検証した。さらに研究課題に対し複合的視点から分析を行うため、本研究代表者は現代の大衆的な文芸作品に見出せる神話的また儀式的な演劇的身振りや行為遂行性を、受容美学や比較文学の観点から検証した。また近代で演技メソードとして体系化された即興とその実践効果について注目し、これを実際の教育現場で応用した。この実験的な授業デザインにおいて、テクストの即興的利用による創造力の高まりや、参加者の示した異文化的また遊戯的な環境への自主的な関与について理論化した。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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http://miuse.mie-u.ac.jp/handle/10076/14416