研究実績の概要 |
本研究は、地方公共団体が供給している公共財の需要者である消費者、市民の効用関数の中に、私的財とともに公共財が導入されることによって、市民の行動がどのように変化してくるのかを考察することを目的としたものである。具体的には下記の三点を考察し、研究することであった。 (a) 多次元性を持つ公共財を表現するには「多属性効用関数」を用いることができるが、これを多次元(多属性)のままで最適化行動を表現し、実証分析を行うことができるかどうか。 (b) さらに、各市民の効用関数に共通の公共財が共通の量だけ導入されることによって、市民相互にインタラクションが発生すると考えられる。この現象をどのように表現することができるか。 (c) 以上の手法によって私的財とは異なる公共財の性質をすべて表現することができるのか。 今年度は、第1段階として、すでに研究を開始している個別の企業のコブ・ダグラス型の生産関数に、相互作用項を含めた場合のオイラー方程式を含んだ動学的生産要素需要関数を導出し、応用地域学会において発表した(「Fokker-Planck方程式を用いた企業集積形成モデル」『追手門経済経営論集』)。この作業は、個別の消費者の効用関数の中に相互作用項を含めて、社会的インタラクションを考察する前段階として必要な作業である。 第2段階として、相互作用項を含めた基数的効用関数を導入し、効用関数の動きを確認した。その結果、Glaeser & Scheinkman (Invited Lecture at the Econometric Society,2002)の手法が適当であることを確認した(「消費者から見た公共性」『追手門経済論集』)。
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