研究課題
基盤研究(C)
物理学にとって現在最も主要な課題であるニュートリノ有効質量の決定のため、原子核の二重ベータ崩壊を利用する方法がある。もしニュートリノがマヨラナ粒子であれば、この崩壊の確率を実験で測定し、原子核行列要素と位相空間因子を理論的に計算することによってニュートリノ有効質量が求まる。本課題実施者は、準粒子乱雑位相近似を用いて150Nd->150Smでの原子核行列要素を計算した。位相空間因子よりもこちらの方が近似方法によるばらつきが大きく改良が強く望まれているからである。完全性近似のもとで二核子移行による仮想経路を用いた計算が可能であるが、平成27年度の成果は、この方法と本来の二重ベータ経路による計算とが一致しなければならないという要請が、用いる有効相互作用に対する拘束条件になるということを見出したことである。これまでは崩壊を引き起こす演算子に含まれる有効軸性ベクトル流結合と陽子・中性子対相互作用という二つのパラメータの決定が分離できないという問題があったが、本年度の成果により、陽子・中性子対相互作用の強さを崩壊の演算子とは独立にかつ理論的に決められるようになった。上記の崩壊例においてこのように決めた陽子・中性子対相互作用の強さは陽子・陽子対相互作用と中性子・中性子対相互作用の強さのほぼ平均値であった。得られた原子核行列要素は、準粒子乱雑位相近似を用いている他のグループの値の上限値付近であった。計算過程の不確定性を理論的に除いたことによって計算結果の信頼性が向上したということが、成果の意義である。さらに48Ca->48Tiの計算も開始した。150Nd->150Smとはたいへん物理的性質の異なる核の崩壊で課題実施者の新しい方法が問題ないかどうか調べることが目的である。
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Physical Review C
巻: 93 号: 2
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AIP Conference Proceedings
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