研究実績の概要 |
東日本大震災に伴う, 福島を中心としたセシウム等による土壌汚染は深刻で, 除染作業が進む今日でも, 未だに多くの帰還困難区域が設定されている。セシウムは土壌表面の負電荷と静電気力により結合しているため, 土壌表面に強固に吸着し, 通常の環境では簡単には離脱しない。そこで, 除染の手段として, 主に汚染土壌の掘削除去が行われてきた。また, 今後は中山間地での除染作業も考慮する必要があり, 斜面も多くなることから作業の難航が予想される。そのため, この様な人的作業の難しい場所でも, 安全・効率的・簡便に除染を行える手法の開発が必要である。そこで, 動電学的手法による除染方法の開発と, その際に必要となるイオン吸着電極の開発を目指した。 動電学的手法は汚染土壌に電極を設置し, 直流電圧を印加することで, 汚染の原因となる金属イオンを陰極へ移動させることで土壌を修復する方法である。電気を使うことで, 原位置処理が可能となり, 除染が困難な中山間地でも応用が期待できる。本研究では, 中山間地での動電学的手法によるセシウム除染のために, クエン酸や酢酸のような有機錯体を利用し, 斜面での除染にラボスケールで成功している。また, 動電学的手法を用いる場合は, 土壌のゼータポテンシャルが重要なパラメータとなることが分かった。そして, ゼオライトを用いたイオン吸着電極の開発にも成功している。これらの知見および技術を利用し, 除染に役立てたい。
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