研究課題
基盤研究(C)
加齢に伴う長期記憶障害(LTM-AMI)がどのような機構で起こるのかについては未解明である。私達は既に加齢体で長期記憶に必要な神経・グリア回路の活性低下を見出していた。今回私達は(1)その結果、固定中のグルタミン酸トランスポーターの増加が抑制され、グルタミン酸シグナルが増加すること、(2)グルタミン酸シグナルの増加は固定中のドーパミン作動性(DA)神経の活動増加とアポトーシス関連因子カスパーゼ3活性化を引き起こすことを見出した。一方(3)記憶痕跡形成は正常であることを明らかにした。以上の結果よりLTM-AMIは記憶の形成障害ではなく、DA神経細胞の過剰興奮による固定障害であることが示唆された。
若齢脳における長期記憶形成では記憶形成時に上昇したグルタミン酸シグナルを、記憶形成後には一転して抑制する機構があることを示した。一方、加齢個体ではこの抑制機構が機能せず、その結果神経細胞の過剰興奮とアポトーシス関連因子カスパーゼ3活性化が引き起こされ、これがAMIの原因となることを明らかにした。長期記憶がリスクの上で形成されるという概念は新しい概念であり、若い脳にはこのリスクを低下させるグリア細胞を介した仕組みが存在することを示した。本研究で得られた知見はAMI研究および記憶形成におけるグリアの機能について新たな見解を与えると思われる。
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