研究課題
基盤研究(C)
成人T細胞白血病(ATL)におけるsurvivinの高発現が抗がん剤耐性の一つの要因である。Survivinは白血病を含む腫瘍細胞で特異的に過剰発現し、癌治療の標的分子として注目されている。SurvivinはXIAPと結合し、XIAPを安定化させ、caspase-9の活性化を阻害することによって細胞のアポトーシスを抑制する。我々は、survivinのXIAPとの結合部位の配列のN末端に膜透過キャリアーPTDをつけたオリゴペプチドを合成し、ATL細胞に対する効果を調べた。1)このペプチドは濃度依存性にS1TとMT2などのATL細胞株とHL60、NB4などの白血病細胞株の細胞死を強力に誘導した。正常細胞のHELとHUVECでは全く影響を示さなかった。更に、健常人の末梢血から単離したリンパ球はATL細胞株S1Tと比較して、かなり弱い細胞死誘導効果を示した。この結果はこのペプチドが癌細胞特異であることを示唆した。2)ペプチドで処理したS1T細胞をGiemsa染色し、典型的な核断片化ではなくて、細胞質の膨張化を観察した。さらに、caspase-3の活性上昇が見えなくて、PARP、caspase-3、caspase-9の切断もなかった。これらの結果は、ペプチドによる細胞死が非アポトーシスであることを示唆した。3)ペプチドの処理で、S1T細胞のLC3-IIのレベルが上昇し、p62のレベルが低下した。オートファジー阻害剤との併用で細胞死が更に増加した。一方、RIP1のレベルが低下し、ネクロトーシス阻害剤との併用で細胞死が部分的に阻害された。これらの結果は、このペプチドが保護的なオートファジーとネクロトーシスを誘導したことを示唆した。以上の結果によりこのペプチドがATL細胞のネクロトーシスを誘導することがわかった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Int J Oncol.
巻: Feb;46(2) 号: 2 ページ: 474-86
10.3892/ijo.2014.2773