研究実績の概要 |
シュウ酸輸送体であるOxlT(Oxalate Transporter)は基質駆動型輸送体の中で最大であるMFS(Major Facilitator Superfamily)ファミリに属し、細胞膜を介してシュウ酸とギ酸の対向輸送を行う。このOxlTの輸送メカニズムを解明するために、既存の結晶の改善を考えたが環境が整わず、既存のデータのみを用いて構造解析を行った。OxlTは他のMFSメンバと同様に6本の膜貫通ヘリックスからなる2つのドメインを有し、ドメインが大きく動いて基質を輸送すると考えられている。OxlTとFABの共結晶を得ているが、結晶中でOxlTは基質を内包する閉じたコンフォメーションをとっていると予想している。データはSPring-8のビームライン(BL26B2およびBL41XU)で収集し、CCP4パッケージを用いて解析した。異方性が高いものの全体的に概ね3.2 A程度での回折強度データを得た。このときの結晶の格子定数はおよそa=115 A;, b=233 A;, c=51 A;, a=b=g=90°で空間群はP22121であった。共結晶中にはOxlTのN末、C末ドメインとFABドメインの3つが含まれ、実際PDBに登録されているこれらのドメイン構造を用いて、分子置換を行った。OxlT部分については、他のMFSメンバの構造からホモロジーモデルを作成した。FAB部分については、初期にはFAB全体を1つのドメインとしたが後には重鎖、軽鎖、さらにそれらの可変領域と定常領域に分けて合わせた。分子置換したモデルを多少修正し、暫定的に精密化プログラムを動かしたところ、3.2 A分解能でR-Factor/Free-Rが0.3/0.4であった。今後はモデルを改善し、論文の形で報告し、輸送メカニズムを議論したい。
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