研究課題
基盤研究(C)
我々は、マウスの DNA polymerase ι(Polι)がウレタン誘発肺発がん抵抗性遺伝子座 Pulmonary adenoma resistance 2(Par2)の責任遺伝子であることを、Polιのノックアウト(KO)マウスを利用して、近年証明した。また、ウレタン投与によって誘発される生体内突然変異の頻度を gpt delta アッセイ系を利用して定量し、KOマウスの肺組織における変異頻度が野生型マウスよりも1.8倍高いことを明らかにした。この差は、生理食塩水投与群では確認できなかった。今年度は、Polιによる肺発がん修飾が、発がん物質特異的であるか否かを検討する際の基本情報として、gpt deltaアッセイで獲得した肺組織由来の変異gpt遺伝子につき、変異スペクトラムの比較検討を「生理食塩水投与群」対「ウレタン投与群」ないし「野生型マウス」対「KOマウス」で行った。生理食塩水投与群では、野生型マウス、KOマウスのいずれにおいても、gpt変異体の責任変異は、G:C to A:T transition が最も高頻度に認められた。一方、ウレタン投与群では、A:T to G:C transition および A:T to T:A transversion の頻度が生理食塩水投与群に比して増加傾向を示したが、この傾向はKOマウスおよび野生型マウスの間で同様であった。つまり、変異スペクトラムはウレタン投与によって修飾されるが、Polι遺伝子のKOによっては修飾されないことが示された。結論として、Polι遺伝子産物はウレタン投与後に惹起される肺細胞のDNA突然変異のスペクトラムを修飾することなく、同突然変異の発生率にのみ影響を与えることが示唆された。このようなPolιの性質が、ウレタン以外の発がん物質に関しても共通であるか否かにつき、さらなる検討が必要である。
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Oncogene advance online publication
巻: 33 号: 27 ページ: 3612-3617
10.1038/onc.2013.331