研究課題
基盤研究(C)
GATAファミリーは造血系や心臓、肝臓、腸管などの発生を制御する転写因子で、GATA3は胸腺内でのT細胞の発生とアレルギー疾患発症の要となるTh2細胞の分化を制御している。申請者はこれまでGATA3が機能の異なる複数の複合体を形成し、様々なターゲット遺伝子の発現を活性化または抑制することでTh2細胞の分化をコントロールしていることを明らかにしてきた。本研究では、GATA3が受ける翻訳後修飾に注目し、これまで不明であったGATA3複合体の形成メカニズムを世界に先駆けて明らかにする事を目的とした。本研究により、GATA3のアルギニン残基 (R256, R261)がメチル化修飾を受けている事が明らかになった。アルギニンメチル化修飾を受けたGATA3はTh2サイトカインであるIL-4、IL-5、IL-13のうち、IL-5だけを特異的に誘導できない事が明らかになった。その分子メカニズムとして、アルギニンメチル化GATA3はHeat shock protein 60 (Hsp60)と強く会合し、Hsp60がRNA polymerase IIによるIL-5遺伝子の転写伸長反応を阻害している事が明らかになった。IL-5は好酸球性アレルギー炎症の惹起に重要な因子であり、その制御は新たなアレルギー疾患治療法の開発につながる事と考えられている。アルギニンメチル化状態を疑似したGATA3変異体をTh2細胞に導入する事により、Th2細胞からのIL-5産生が特異的に抑制された事から、GATA3のアルギニンメチル化状態の制御が、より副作用の少ない IL-5特異的なアレルギー疾患治療法の開発につながる事が期待される。
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Nature Communications
巻: 18 号: 1 ページ: 5872-5882
10.1038/ncomms6872