研究課題
基盤研究(C)
認知症の前駆段階として軽度認知障害(MCI)が注目されているが、軽度の運動症状である軽度パーキンソン徴候(mild Parkinsonian signs:MPS)も認知症やParkinson症候群(PS)の前駆段階である可能性が指摘されている。我々は、島根県海士町においてMPSの頻度を本邦で初めて明らかにした(Uemura Y, et al. J Neurol Sci 2011)。本研究は、認知症やParkinson病(PD)へ進行する住民の特徴を調査する縦断的疫学研究である。1. 国際的にも少なく、本邦では全く調査されていないMPSの予後調査を実施した。1) MPSの評価者間信頼性と評価者内信頼性のCohen's kappaはK値=0.885と0.868と良好であり、2) 60歳以上の住民においてMPSは22%の頻度であり、3) MPSは認知機能障害やうつと関連し、運動機能正常群、MPS、PSの順に悪化し、4) 生命予後に関して、運動機能正常群、MPS群、PSの順に悪化し、5) MPSが正常群に比して高頻度にPSへの移行や認知症の発症を認め、6) MPSを有すMCIはMPSを有さないMCIに比して有意に認知症を発症することを認めた。2. 平成22年度に海士町において撮影した頭部MRIについて解析し、糖代謝障害と脳萎縮との関連性、健忘型MCI群における側頭葉内側面の脳容積との関連性が認められた。3. 血中蛋白の網羅的検討からLewy小体型認知症の診断バイオマーカー候補物質としてthymosinβ4、Retinol binding protein 4、Human Platelet factor4を同定し、Alzheimer型認知症との差について検討した。
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