配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2016年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2015年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2014年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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研究実績の概要 |
インターフェロンγ遊離試験(IGRA)は活動性結核の補助診断にも用いられ、その結果が陰性であると結核症の可能性が低いと判断される。しかし、高齢者などでは免疫力の低下に伴ってIGRA偽陰性が生じやすいことが知られている。そのメカニズムとして、IGRAで測定している結核菌抗原特異的エフェクターメモリー細胞数や機能の低下、T細胞抑制性表面分子、制御性T細胞によるT細胞活性化制御などの原因が考えられるが十分に明らかにされていない。これら偽陰性の病態を明らかにするため、本研究では、ベトナムの国際共同研究血漿サンプルによる予備的検討と日本の活動性結核症患者血液サンプルによる本検討のふたつの構成で解析を進めている。前者については、平成26年度より、ベトナムのHIV陰性の活動性結核375検体を用いて実験を開始、IGRA偽陰性を示す19検体を中心に、その臨床症状、検査経過を検討、更血漿タンパク中の各種ケモカイン、サイトカインのプロフィールについて解析を開始しており、これらの知見については、国際誌に投稿・報告した(Matsushita I, et al. Int J Infect Dis 40:39-44,2015.)。日本の活動性結核症患者血液サンプルによる検討についても解析を始めており、これまで、偽陰性の原因のひとつとして、免疫関連遺伝子およびそれらの制御因子の関与の可能性を考え、免疫制御因子を抑制することでT細胞の抗原特異的インターフェロン産生応答が回復するか、in vitro系の構築を試みた。また、結核菌抗原特異的エフェクターメモリー細胞に関しては、その比率を検討するために試みてきたフルオロスポット法によるインターロイキン2とインターフェロンγの同時検出系を利用して検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本の活動性結核症患者血液サンプルによる検討については、IGRA偽陰性に関連すると考えられる因子群のうち、ヒトの活動性結核との関連について報告がなされてきている免疫抑制性共シグナルを伝達するPD-1分子を中心に、そのリガンドであるPD-L1,PD-L2、同じくT細胞抑制系分子の一つであるCTLA-4について、IGRAとの関連の解析を開始、昨年度は、活動性結核におけるIGRA陽性群と偽陰性群の末梢血リンパ球のサイトカイン産生特性についてさらに症例数を増やして検討し、年齢の影響も考慮しつつ、IGRA陽性群、陰性群の2群間で有意差が得られるか否かを指標に、偽陰性に特徴的なマーカーを明らかにすることを目的としていたが、主任研究者の入院を必要とする体調面の理由により、研究事業の完遂に至らず、延長申請に至った(延長承認日:平成29年3月21日)。同じく免疫抑制性シグナル分子でT細胞アナジーに関わるmTOR経路の分子やFoxP3, Tregなど制御性T細胞関連分子などを対象に検討を進めていく予定であった。
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今後の研究の推進方策 |
IGRA偽陰性に関連する因子としては、これまで検討をしてきたPD-1,PD-L1,PD-L2 CTLA-4以外にも、同じく免疫抑制性シグナル分子でT細胞アナジーに関わるmTOR経路の分子やFoxP3, Tregなど制御性T細胞関連分子なども挙げられる。今後は、同様の実験系を用いることによりこれらの因子についても検討可能であると考えられる。 更に、これらT細胞応答に関しては、活動性結核におけるIGRA陽性群と偽陰性群の末梢血リンパ球のサイトカイン産生特性についてさらに症例数を増やして検討、昨年度、実行に至らなかった実験について引き続き遂行していく予定である。 また、免疫関連分子のmRNA及びこれらを制御するmiRNAなどの解析系については、現在、精度の高い測定が可能であり、例えば、mRNA(IL12RB2, IL2, IL12A, IL23A, PRF1, LTA, GNLY, IL18, TNF, IL12RB1, TGFB1, GZMB, IFNG, IL15, IL4, CXCL10, IFNGR1, SPP1, IL10, IFNGR2)およびmiRNAのリアルタイムPCR測定系については、別研究ですでに共同研究者らが確立している。これらの手法を用いることにより、偽陰性のメカニズムに関連する可能性のある免疫関連遺伝子mRNA、および最近これらの免疫関連遺伝子を制御するとの報告が蓄積されているmiRNA、さらにLuminexシステムによる血漿タンパクのスクリーニングについても検討可能となる。 結核感染がIGRAによって検出できない場合があることは不都合であり、IGRA偽陰性のメカニズムを解明することは、結核対策上、重要である。
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次年度使用額の使用計画 |
日本の活動性結核症患者血液サンプルによる検討については、これまで、IGRA偽陰性に関連すると考えられる因子群のうち、免疫抑制性共シグナルを伝達するPD-1分子を中心に、そのリガンドであるPD-L1,PD-L2、同じくT細胞抑制系分子の一つであるCTLA-4について、IGRAとの関連の解析を開始していたが、新たに同じく免疫抑制性シグナル分子でT細胞アナジーに関わるmTOR経路の分子やFoxP3, Tregなど制御性T細胞関連分子などを対象に同様の実験系を用いた検討を進めていく予定である。 また、T細胞応答に関しては、活動性結核におけるIGRA陽性群と偽陰性群の末梢血リンパ球のサイトカイン産生特性についてさらに症例数を増やして検討する予定である。
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