研究課題
基盤研究(C)
神経の発生に関与するBMP4は、固形腫瘍(子宮頸がん、好転移性肺がん、メラノーマ)の血管新生を阻害し、既存の正常な血管に傷害を与えることなく腫瘍抑制効果をもたらす。神経芽細胞腫についてはBMP4の投与により腫瘍細胞そのものの増殖抑制が認められ、動物実験では顕著な腫瘍抑制効果が確認された。RNAシークエンス解析により、神経芽細胞腫でしばしば増幅が認められるMYCN遺伝子発現がBMP4によって抑制され、MYCN蛋白の発現低下も認められた。更にMYCN遺伝子と連動してがん幹細胞の制御に関わる遺伝子発現が腫瘍抑制に関与することが分かった。BMP4は神経芽細胞腫の新規治療薬となることが期待される。
小児固形腫瘍として頻度の高い神経芽細胞腫の予後は極端に分かれており、自然に退縮する腫瘍がある一方で、非常に悪性度を増し難治性腫瘍となる場合がある。本研究ではヒトの神経発生とその分化に必須であるBMP4が、神経芽細胞腫の著明な腫瘍抑制効果をもたらし、その作用機序としてMYCN遺伝子発現低下とがん幹細胞に関わる遺伝子の制御に関与することを見いだした。神経芽細胞腫は元来がん幹細胞様の性質を持つため、BMP4シグナル経路がその予後の良悪を決定づけるON/OFF効果を担っている可能性がある。BMP4の投与は既存の血管を傷害しないため、副作用を避け、神経芽細胞腫の完全治癒を目指せる治療薬として期待できる。
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