研究課題
基盤研究(C)
自閉症スペクトラム(ASD)の死後脳研究や脳画像研究から、この障害の病態基盤に白質の異常、すなわち、脳部位間の神経線維連絡の異常が示唆される。その発生機序はいまだ不明だが、少なくともその一部にはミクログリアの過剰な活性化が関与していることが推測される。この点を明らかにするために、本研究では、ASDをもつ成人を対象に、活性化ミクログリアを特異的トレーサーPK11195によるポジトロン断層法(PET)で、白質の軸索走行異常を拡散テンソル法(DTI)で、それぞれ計測した。平成27年度は、前年度に引き続きデータ収集を行った。平成27年度末までに成人ASD者15名、および、それらと年齢・性別・知能指数を適合させた定型発達者15名を対象に、臨床症状の評価を自閉症の標準的診断ツールであるADOSとADI-R、および、感覚刺激への反応異常を測定する日本語版感覚プロフィールにより行い、DTIとPETを同一日に撮像した。そして、脳内に複数の関心領域をおき、DTI画像より拡散異方性(FA)値を、PET画像よりPK11195結合能をそれぞれ求め、両者の関係を統計学的に解析するとともに、ASDと対照との比較、臨床症状との比較を行った。その結果、白質におけるFA値はASDで有意に低く、PK11195結合能はASDで有意に高かった。両者の相関をみると、局所におけるFA値とPK11195結合能とが逆相関する傾向が見られたが、統計学的に有意な水準にはなかった。また、臨床症状との関係においても有意な所見はなかった。有意な結果が得られない理由の一つに、当初の目標例数(ASD群、対照群ともに20名)に達しておらず、検出力が不足していることが考えられた。
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130004992715