研究実績の概要 |
直腸癌に対する肛門温存手術後に高頻度で生じる排便障害は低位前方切除術後症候群として近年注目を集めている。われわれはこの成因と対処方法に関して検討を続けている。本年度は臨床検討として、排便機能障害を生じる成因として術中の括約筋障害が生じていることを見出し、これを国際会議で発表した(Endo S, Koda K, et al. Colorectal Dis 2015suppl; pp40)また骨盤内臓全摘手術での肛門温存の可能性と予後改善について発表した(Koda K 第20回中日消化器外科学会 2015年5月30日 上海)(Koda K, et al. Colorectal Dis 2015suppl; pp72)(Keiji Koda, et al. Int J Colorect Dis 2016; 31:59-66.) また、術前放射線治療が術後の排便機能障害の大きな成因となることから術前の化学療法を以前から開始しており排便機能障害への影響が軽微であることを報告している(Kosugi C, Koda K, et al. 18th ECCO-40th ESMO 2015 Vienna) 以前から臨床例では術後残存大腸の運動機能の亢進が術後排便機能に強い影響を与えていることを報告してきており、術中の外部神経切離がその成因との作業仮説からラットにおいて同様のモデルを作成することを試みてきた。神経切離モデルにおいては確かに脱神経部分の運動機能は亢進していることが確認されたが、その成因として考えている壁内Auerbach神経叢やカハール細胞の変化に関しては明確な結果が得られずにおり今後の課題と考えている。
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